日本有数の温泉地、伊東温泉は潤沢な温泉の湧出量を誇り、屈指の観光地として古くから栄えた土地ですが、その温泉は「観光」のみならず「健康」という見地からも大いに効能を発揮してきました。

古来より重用されてきた療養法「湯治」。温泉浴は腰痛、神経痛、関節痛、冷え性、胃腸機能の低下、ストレスによる諸症状を緩和します。
日本の医学会の巨人、北里柴三郎博士は“予防医学の祖”とも呼ばれ「医の基本は予防にある」という揺るぎない信念を持っていました。
学会出席の為訪れたヨーロッパで、温泉健康施設が生活に定着し、多くの人々が療養に訪れるのを見て、日本にもこのような施設を作るべきだと考えました。
そして効能豊かな温泉が湧き出る稀少な地、伊東に惚れ込み、別荘を建設、敷地内に広大な温泉プールを併設したのです。
華族や皇族の方々や医学関係者、政治家、そして一般開放も行い、地元の子供なども歓迎、多種多様な人々がこの別荘を訪れ、プールを利用しました。
予防医学の先駆けともいえる温泉療法を実践したこのプールは、現代でいうクアハウスと言えましょう。
柴三郎自身も頻繁に訪れ、伊東行きがままならない時は温泉水だけを運ばせたほどの大の“伊東温泉贔屓”であったそうです。
「予防医学」とは病を未然に防ぐ「未病」の状態を保つようにする医学です。
「未病」を維持するには「免疫力」・・・読んで字のごとく「疫病から免れる力」を獲得する事が肝要です。
それにはまず、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルの5大栄養素をバランス良く摂ることが重要となります。
ナトリウム、マグネシウム、亜鉛など健康のために必須であるミネラルは体内では作ることが出来ないので、日々の食事等から摂取しなければなりません。しかし、なかなか食事だけではまかないきれず、サプリメントに頼る傾向があります。
温泉には多種類のミネラルが含まれ、入浴によって肌や呼吸からそれらを人体に取り込むことが出来るのです。
経皮吸収(肌からの吸収)ではサプリメントの3~4倍、経気吸収(呼吸による吸収)ではサプリメントの7~8倍という高い吸収率が認められています。
温泉はまさに全身でミネラルを吸収する究極のサプリメント。
ほとんどの方が温泉に入ると疲れが取れ、幸福感が高まったというデータがありますが、それは単に「気分」の問題ではなく、実際に「健康効果」を獲得しているのです。
当館をご贔屓のプロゴルファーの方もそうですが、アスリートの方や、肉体が資本のご職業の方などには特に顕著に温泉の効果を実感していただいております。
北里邸の温泉プールは、松川をはさんで伊東遊季亭からほんの十数メートル先にかつてはありました。
柴三郎が惚れ込んだ湯は伊東遊季亭と同じ、とろみのある「濃厚な温泉」であったのではと推測します。

北里柴三郎については、以前も当館ホームページのくつろぎ便りにてご紹介しております。
⇒「伊東の祖」 北里柴三郎博士
伊東遊季亭

